前回、前々回からの続きです。
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手術日 09:30 病院到着
鎖骨骨折から4日目の朝。
前日の夜以降、アルジネートウォーターとOS-1のみを飲み、病院へ到着しました。
今日まで病院へは奥さんの母に車で乗せて行ってもらい、とてもお世話になってしまいました。
「午前中はゆうきさんを送ってくけど、午後は孫が同じ病院で診察あるからまた来るの」
松本市は栄えているとはいえ大きな病院は数か所。
実は姪っ子が少し前に手首を骨折してこの病院で手術しているので、かなり通ってる感じなのです。
こういうのも地方あるあるかもですね。
とはいえ地方を履き違えた僕。
毎回、病院へは着替えが面倒なのでパジャマで来てました。
(車やタクシーで来院)
でもいくら地方とはいえ、松本くらい栄えてるとパジャマで通院している人は皆無!
かなり目立ってました。
それともう一つ。
対応してくれたスタッフさん皆さんに「えー!なにこれ!」とか「ウケる!斬新!」と言われた服装が。
実は鎖骨骨折していると、折れた側の腕が上に上がらない。
なので腕を洋服の袖に通すのがとても大変なのだ。
腕を吊っている三角吊も毎回外さなくちゃいけないので、再び吊るのもかなり大変だし・・・
袖に腕を通さないで、それでいて三角吊を外さずに生活する事は出来ないか。
そうして奥さんの発案で生み出されたのが、このTシャツ。
え?!
は??? どういう事?!
腹から手が出てきてるっ!!
どっちが親指なのか小指なのかわからない!!
↑イラストレベルはほっといて
Tシャツのお腹の部分をハサミで切って、そこから掌だけ出すスタイル!
これ発明品じゃね?!
実用新案権の申請出来るんじゃね!?
っていうくらい暮らしやすかったです。
パッと見、腹から手が出てるので気色悪いですが。
さて、奥さんと共に病院へ入ります。
左腕が使えない僕に代わり、奥さんがテキパキと手続きしてくれました。
本当、奥さんにはとても負担がかかっていて申し訳ないし、ありがたいです。
術前の説明がなされ、ベッドに乗せられて待機部屋に運ばれます。
この待機部屋では1時間近く待機となります。(前の方の手術が長引いたため)
奥さんの指銃(シガン)をおでこにグサリと受けたりしながら待ちます。
そしていよいよ手術の時間となりました。
10:30頃? 鎖骨 骨折観血手術
今回、僕が受けるのは折れた鎖骨をチタン製プレートで固定する、骨折観血手術なるもの。
内容を詳しく知りたい方は、こちらのリンクへ飛んでみてください。
このページの「プレート固定」というのが今回のゴール地点になります。
スタッフに声をかけられ、歩いて行きます。
奥さんに手を振ってから、手術室の中へ。
9年ぶりとなる手術室。
その物々しい機材に圧倒されそうになるのは9年前で経験済みなので、今回は緊張することなく術台の上に寝転がる事が出来ました。
寝転んで天井を見上げる。
ドラマでよく見かける、あの眩しいライト。
「ふーーーーー」
少し息を吐いて身体の力を抜きます。
担当のドクター、麻酔担当医さん、んーーー、他にもお二人ほど名前を教えてくれました。
まず始まるのは、腕の神経の根元に注射で麻酔をする、腕神経ブロック麻酔。
針を見ると怖いので、目を閉じます。
「もし、麻酔を入れてる時に腕に電気で痺れるような感覚があったらすぐに行ってください」
「はい」
その場合はこの麻酔は中止されるはずだ。後遺症が残るかもしれないパターンだから。
針が刺さる感触。
多分、肩の後ろの方を刺したんだろうけど、この時の僕は首に刺したのかと感じた。(何故かはわからない)
「まずは3cc入れます」
という声と共に何かが身体の中に入ってくる感覚!
その音が微かに脳に聞こえた気がした。
首のあたりから聞こえる様に感じるけど、骨を伝わって聴こえるのだろうか?!
続いて胸の辺りがピクピクと何か脈打つかの様な感覚。
入ってきてる!!でも痺れてる感覚はない!
※下弦の壱が無残様に血を注入されているシーンを思い出す※
何cc入れるのかわからないけど、何度か3ccか4ccの注入があった。
そのたびに同様の感覚があり、思わず顔をしかめる。
続いて口にマスクが付けられた。
そういえば点滴も刺してる。ここにも麻酔入ってるんだっけ?違うっけ。
マスクからは麻酔が出る様子。
「そんなに深く吸う必要はないですからね。すぐ寝ちゃいますから」
目を閉じる。
麻酔がマスクから出るアナウンスがある。
閉じた目に広がるのは当然ながら瞼の裏側。
つまり黒い世界だ。
数秒すると、その黒い世界の中心が、さらなる深い黒い円になった。
その深く黒い円が、視界中に広がっていく。
視界の全てが深い黒になるかならないか。
その瞬間までしか記憶が無い。
パチン!!!
何か大きな音がした気がして目を開いた。
不思議な事に、その音が僕の目を覚まさせる音だというのは瞬間的にわかった。
さっきと同じ風景だ。
手術台の上で寝転んでいる。
何かドクターと会話をした様な気がする。
恐らく、手術は終わりましたよっていう会話だ。
奥さんが待っているから、そこの前を通って入院する部屋へ移動すると説明された。
返事は声でしたのか、頷いただけなのかは記憶が曖昧だ。
キャスター付きのベッドで手術室から廊下へ運ばれる。
「ありがとうございました」と言えたかどうか明確な記憶が無い。
奥さんの姿が見えた。
安心させたくて「やっほー」と言ったのだけど、思ってたより遥かに小さな声になった。
14:30頃? 二人部屋
運ばれたのは二人部屋だった。
左が僕、右が空いている空間だった。後でもう一人運ばれて来るという。
点滴が2種類繋がっていた。
ここからの時間が辛いというのは9年前の心房細動で知っている。
ベッドから降りる事はもちろん、身体を少し動かすのも大変だ。
なんせ全身麻酔の後。
そして手術した側の腕は全く動かない。
ていうか『どこに自分の腕があるのかもわからない』のだ。
何を言ってるのか分からないと思うが僕も何をどうしたら自分の腕がそこにあると感じられるのか分からないのだ。
いや待て!
微かに自分の左腕が何処にあるのか感じるポイントがある。
親指の先っちょ。
そこだけに微かに感覚があり、わずか0.5cmほど動かせた。
親指に感覚はあるけど、肩から先には感覚は無く、そこに腕が存在してないとしか言えない。
反対側の腕は点滴が繋がってるので、これもまた動かしにくい。
そんな訳で殆ど動けない状態でずーっと寝転がっていた。
いつの間にかもう一人もベッドごと運ばれてきたが、大きな手術の後なのか、すぐに寝てしまった。
18:00を過ぎても、指数本が少し動く程度で、いくらなんでも回復が遅いのではないかという話になり「後遺症」という言葉が頭に浮かぶ。
しかし麻酔医さんが「すごく効いてるだけだよ。朝には治ってるよ」とにっこり。
そんなら良いやと思い安心。
全く動けないので夕飯も無し。
20:00頃になると点滴側の腕が動かせる様になっていたし、手術側の腕も拳を握ったり開いたりはゆっくりと出来る様になってきた。
ベッドからは降りれないので看護師さんに、手持ちのバックからゼリー等を取り出してもらった。
これが本日の夕食って事になる。
それと、今ハマってる漫画「スパイファミリー」
こんな状態だからページめくるの大変で読むのに1時間半かかった。。
ユーリ・ブライア面白いな。
そうしてあの、長い長い夜がやってきた。
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21:00 消灯
病院の夜は早い。
21:00に消灯になり、部屋は真っ暗になる。
この時間になると手術側の腕以外は普通に動く様になったので、まあ寝返りくらいは打てるし、頑張ってお手洗いにもふらふらと出かけれる。
目を閉じると睡魔に襲われた。
どのくらい時間が経っただろう。
何かの音で目が覚めた。
21:45
え・・・。時間経ってない。
スマホを片手で動かす。
奥さんにラインをするが片手だと文字が打ちにくい。
ネットニュース見る。
ああ、コロナなんてすっかり忘れてた。
目を閉じる。寝れない。目を閉じる。寝れない。
左でを動かそうとする。何処に左手があるかわからない。
かなりの時間が過ぎた気がするので時計を見る。
21:55
嘘だろ・・・10分しか経ってないんだぜ。
そんな事を永延と繰り返す。
頭の中で米津玄師さんのLemonが流れる。
♪夢ならばどれ程良かったでしょう♪
マインドフルネスの呼吸を試す。
そうして何とか24:00前くらいに寝た気がする。
またしても何かの音で目覚めた。
隣の患者のいびきだ。
26:00 2時間経過している。
大きな怪我らしい。
イビキの音と、医療器具の電子音、定期的に動く自動脈拍機のモーター音。
廊下の方で「三才山線で事故があったらしい」というような会話。
やがてウトウトとしてきた。
夢の・・・中へ・・・・
パオーーーーーン!!!!
?!( ゚Д゚)ナニナニ??
なんか大きな唸り声の様な音で目が覚めた。
何事だ??
ズゴォーーーー!!!
パオーーーーーン!!!!
ズゴォーーーー!!!
隣の患者さんのイビキだった。
パオーンって・・・
15分…30分・・・45分・・・いくら経ってもパオーンだ。
とうとう聞こえるくらい大きな声でツッコミを入れた!
「像かよ!!!(# ゚Д゚)」
パオーーーーーン!!!!
ズゴォーーーー!!!
イビキは続くよ何処までも。
仕方ないよ、あの人、きっと僕より遥かに重症だもん。
そんな騒音の中でもついに疲労で眠りに落ちた。
「お眠りぃぃぃ」
05:30 起床
窓の外には美ヶ原高原のある山脈。
その向こうから太陽が昇ろうとしている。
ここは映画「神様のカルテ」の舞台にもなった病院。
確かにこんな景色だった気がする。
とうとう夜が明けたのだ。
ここからついに復活への日々が始まる。
手術した側の腕も・・・
動いた。
ゆっくりとではあるけれど、感覚は戻っていて動く。
鎖骨を揺らさない様にゆっくりと。
「朝ごはんですよー」
まあ鎖骨骨折のリハビリはこれからだ。
何といっても、この朝食ですら、食べるのが大変だったくらい腕は動かない。
でも、ちゃんとして食事は本当に美味しかった。
奥さんが迎えに来て、一緒にドクターの説明を受けた。
病院の方々、スキー場の方々、救急車の方々、本当にありがとうございました!
奥さん、今回も、そして、いつもありがとう。
こうして長い夜は明け、そして時は動き出す。
日常を取り戻すにはまだまだ時間が必要だ。
後悔することだってある。
けれど、時は戻らない。進むだけだ。
また腕を治して前へ進んでいこう。
数か月後の完全回復を楽しみに。
一歩ずつ一歩ずつ。
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